HW-9のフィルタを狭帯域化する2001年4月 |
これが3台目のHW-9です。前のオーナーが、その前のオーナーから不動品をつかまされて、修理して動作するようになったものを譲っていただきました。以前この場所に置いてあった自作オールバンド機を押し退けて、シャックの特等席に鎮座しています。 |
写真の右に写っているのがHW-9のIFフィルタです。一応、8.83MHzの水晶フィルタということになっていますが、中を開けてみた人がいて、何と簡易FM受信機などで使われているような水晶サイズの3端子のモノリシック水晶フィルタ(MCF)が2個入っているだけだったといいます。帯域はSSBフィルタ並に広く、7MHz等ではかなり苦しいです。HW-9にはオーディオ・ピーク・フィルタがついていて、これはこれで結構切れるのですが、IF帯域内に入って来る強い妨害波があると、AGCが振られますので、ほとんど役に立ちません。そこで、9MHzの水晶を5個並べてラダー型のフィルタを作ってみました。写真左がそれです。 1年前に同じ水晶で6エレフィルタの実験をしてデータをとってありました。このときは、ネットアナHP8754Aを使い、信号源にはネットアナのスイープ出力でDCFM変調をかけたHP8656Bを使いました。330pF(段間680pF)をぶら下げた場合、帯域は計算値で553Hz、実測で約540Hz程度でした。ロスがやや大きくなりますが、帯域はちょうど手頃なので、今回も同じ容量を挿入することにしました。 外観は、オリジナルのフィルタよりもちょっと大きめですが、足を少し長めにして基板から5mmほど浮かしてやることで、うまく基板にも乗ります。 |
これは、もともとのHW-9のIFフィルタの通過帯域特性をスペアナMS68BとトラジェネMH628Aを使って見たものです。横軸が1kHz/div、縦軸が10dB/divで、一番上の基準線はロス0dBです。入出力に1:9の広帯域トランスをつないで見ています。帯域内に大きなリップルがあります。6dB帯域は大雑把に言って約3kHz、60dB帯域は9kHzくらいです。 こうやって見てみると、SSB用としても、簡易受信用というのがふさわしい特性です。これではやはり7MHzがつらいのもうなずけます。 |
これは、今回製作したフィルタの通過帯域特性です。上と同じく横軸が1kHz/div、縦軸が10dB/divです。一番上の基準線は-8dB(これが通過ロス)に合わせてあります。計算上の入出力終端抵抗値が約50Ωなので、そのまま測定機器と接続しています。中心周波数は8.99535MHz。6dB帯域は約600Hz、60dB帯域は約1.5kHzです。形状比は2.5とまずまずですが、スカートが60dBまでしか切れませんので、あまりに強力な局が近接して出てくると、厳しいかもしれません。 上記の通過特性から、送信キャリアポイントは8.99535MHz、受信キャリアポイントはそれよりも700Hz上の8.99605MHzに取ることになります。 なお、手持ち水晶の関係で、フィルタにはTOYOCOM製を使い、キャリア用にはKDK製を使ったのですが、このKDK製が頑固で全然周波数が動かず、うまくシフトしてくれません。手製のVXO試験器で計ってみると、FCZのVXO-2コイルと20pF×2のポリバリコンをつけた場合、TOYOCOMが8.99482MHzまで下がるのに対して、KDK製は8.99757までしか下がらないことが判明しました。よって、キャリア用もTOYOCOM製に変更することにしました。 このTOYOCOM製の9.0000MHz水晶は、秋月電子で1個100円で売られていたものです。KDK製は、どこで買ったのか忘れてしまいましたが、袋に1個150円のシールが貼られていました。 |
上記の結果に気をよくして、さらに8エレのラダー型フィルタ+MC1350PのIF段というものを作ってみました。HW-9本体のIFアンプはMC1350Pとピンコンパチでゲインが10dBほど高いMC1349が使われており、これにもう1段追加すると発振してしまいますので、本体のIFアンプもMC1350Pに差し替えます。IFをMC1349×1段からMC1350P×2段に変更することで、水晶フィルタのロスを吸収するとともに、より深くAGCをかけることが可能になります。 入出力は、写真の通り元のフィルタとピンコンパチに仕上げてありますが、その他にIFアンプの電源やAGCラインなどは基板上でハンダ付けします。 |
これは、ラダー型8段フィルタの通過特性です。上の5段と比べて、スカート特性がだいぶ改善されているのがわかります。通過周波数帯域でのロスは数dBですが、悪化していますが、我慢します。 |