Fujiyamaの40m機への改造レポート

pdf形式でダウンロードする

fujiyama40m.jpg

2001.08.25 JG1EAD


以下の改造レポートは、Fujiayam開発チームの公式サポートの対象ではなく、私個人の興味本位の実験ですので、仮にみなさんが改造に失敗しても、開発チームはもとより、私としても何ら責任を負えません。追試等はあくまでも各自の自己責任の範囲でお願いします。また、文中で用いられている「Fujiyama40」は、Fujiyamaの40m改造機に私が勝手に命名した呼称であり、そのようなキットの頒布を予定しているというような事実は一切ありません。hi


Fujiyama改造にあたっての考慮点

まず、改造にあたって特に考慮すべき点から。

  1. Fujiyamaでは、IFを10.240MHz、LOを8MHz台にとっている関係で、周波数ディスプレーでもLOの周波数にIFオフセット値(キャリア周波数)を加算した値を表示するプログラムを使用しています。IFオフセットはあとから容易に変更できる設計になっています。が、LO-IF、IF-LOというような周波数関係にはそのままでは対応できません。このため、公式サポート外である他バンド改造にあたっては、あくまでもLO+IFという周波数構成で臨む以外にありません。その結果として、IFよりも低いバンドに出ることはできませんので、10.240MHz以下の周波数のバンドに出るには、IFそのものを変更しなければなりません。
  2. Fujiyamaでは、IFフィルタを帯域可変としていますが、その原理上、LSBモードでは帯域可変に対応できません(その理由はすでに余所で言及しています)。LO+IFではサイドバンドが反転しませんので、結局、LSBモードを必要とするバンドへの改造にあたっては、少なくともLSBモードでの帯域可変の利用は断念せざるを得ません。
  3. Fujiyamaの回路構成は、基本的にはHF帯から50MHz程度までの広帯域で利用できるものと考えられるので、以上の2点を踏まえて改造の設計を行えば、まずまずの性能は得られるはずです。ただし、18MHz帯での使用を念頭に置いて、大入力・多信号特性よりも感度を、そして作りやすさを重視したために、受信ミキサーにSN16913Pというギルバートセル型ミキサICを使用していることから、HFのローバンドへの対応については、受信初段の前に切替型のATTを追加するなどの対策が必要となる場合もあります(これについてはすでに公式サポートページ(リンク切れ)に情報を掲載しています)。

帯域可変IFフィルタ回路の変更

以上の点を踏まえ、7MHz改造にあたって、まずIFフィルタを4.9152MHzの水晶によるラダー型フィルタに変更することにしました。この水晶は、汎用品として安く手に入れることができます。注意すべき点として、同様に手に入れやすい水晶で4.0000MHzというものもありますが、IF4.0000MHz+LO3.0000MHzというような周波数構成は、受信時の内部妨害や送信時の近接スプリアスが低次で出やすいので、避けた方が賢明です。その点、IF4.9152MHzの7MHz機は、WのQRP機キットなどでも実績があり、まずまずの選択だと思います。

さっそくFujiyamaのIFフィルタの5個の水晶を10.2400MHzのものから4.1952MHzのものに交換してみました。ところが、制御電圧を変化させてみても、どうもSSB時に必要な2.4kHz程度の帯域を確保できません。水晶は元と同じHC/49Uタイプです。特性を測ってみると、元の10.2400MHzの水晶の見かけの端子間容量が約4.7pF程度、直列共振周波数と並列共振周波数の差が約22kHzであるのに対して、今回使用した4.9152MHzの水晶ではそれぞれ約3.8pF、約12kHzとかなり小さめです。このことは、外部の挿入容量が同じとき、帯域がかなり狭くなることを意味しています。外付け挿入容量をさらに小さくすれば帯域は広がりますが、バリキャップKV1235Zにかける電圧を最高の4.5Vにしても、約1.4kHzという狭い帯域しか得られませんでした。

バリキャップをちょっとだけ容量の小さいものに変更するというのは実際問題として難しいので、バリキャップにかける電圧の最高値を高くすることにしました。この電圧は、PTTやKEYの操作によって切り換えているT5V、R5Vという電圧をもとに発生させていますので、このT5V/R5Vを作っているレギュレータIC自体を78L05から78L08に変更してしまいました。これで、最高約7.5Vまでの制御電圧をかけることができます(逆流防止用Diの降下分がある)。設定電圧5.88Vのとき、SSB用に適当な2.4kHzの帯域を得ることができました。

なお、このときの通過帯域のようすをスペアナとトラジェネで測定した結果、キャリアポイントについては、下側(CW受信モード用)4.9130MHz、上側(LSBモード用)4.9154MHzとなりました。

前記の考慮点2にあるように、LSBモードでは、帯域を変化させることはできるものの、帯域を狭くすると音声の低域がどんどんカットされてしまい、実際上使用不能です。CWモードでは元機と同様に帯域可変機能をFBに活用することができます。


VCLOからVFOへの変更

FujiyamaのVCLO回路(製作マニュアルより抜粋)

fujiyama_vclo.gif元回路は8MHzのセラミック発振子(セラロック)を使った可変周波数セラロック発振回路(VCLO)です。

Fujiyama40のVFO回路

fujiyama40_vfo.gif Fujiyama40では、IFを4.9142MHzとした関係で、局発は約2.1MHzのVFOとしました。VCLOに用いたFCZ研究所のVXO-2というVXO 用コイルは、特に温度特性に配慮したコア材を使用していますので、VFOコイルに用いても良好な特性を得る事ができます。

上図でL301とX301/R301との間をパターンカットしてL301のホット寄りの端子をGNDに落とすと、VFO用の並列共振回路ができあがります。実際の発振周波数は発振段の帰還容量、発振段との結合容量(パディングコンデンサ)、バリコンの合成容量とインダクタンスによって決まります。帰還容量をそれぞれ1200pF、パディングコンデンサを390pFにすると、所望の2MHz台付近で発振します。実際には、やや周波数が高めでしたので、VXO-2コイルの巻き数を10ターンほど追加して60ターンとしてみましたが、元のままでも何とかなるかもしれません。また、VXOではなるべく可変範囲を広くとるために、通常バリコンのトリマは全部抜いた状態にしますが、VFOではもともと可変範囲が大きく得られますので、むしろトリマを全部入れたくらいで所望の100kHz+αの可変範囲となりました。

なお、発振段にもともと使われていた2SC1815Yそのままでは、やや初期の周波数変動が大きかったので、2SK241Yに変更したところ、初期変動250Hz、その後1時間あたり10Hz程度のドリフトに収まりました。発振周波数を低くとったため、周波数安定度は驚くほど良好です。

発振段のゲートとGND間にある1SS53は、振幅安定化のために追加したものです。


キャリア発振回路の変更

Fujiyamaのキャリア発振回路(製作マニュアルより抜粋)

fujiyama_carrierosc.gif元の回路は、キャリアポイントをUSBモード(キャリアポイントはサイドバンドの下側)とCWモード(USBモードよりも約800Hz高い周波数)とで切り換えています。いずれの周波数も水晶の銘板周波数よりも数kHz低い周波数なので、VXO回路の容量を切り換える形としています。

Fujiyama40のキャリア発振回路

fujiyama40_carrierosc.gifこれに対して、Fujiyama40では、7MHzで使用するため、SSBについてはLSBモード(キャリアポイントはサイドバンドの上側)にしなくてはなりません。他方、CWの受信については帯域可変フィルタを利用するため、元回路と同様USBモードになります。このため、元回路とは反対に、CWモード時に周波数を低くするようにシフト回路のロジックを変更しています。回路自体は改造後の受信BFO回路と同一になります。

それぞれの周波数は、フィルタの特性を実測した結果、LSBモードを4.9154MHz、CWモードを4.9138MHzにすべきことが判明しています。LSBモードでは水晶の銘板周波数よりも高くしなくてはならないので、インダクタンスを入れずに小容量のトリマコンデンサで周波数を設定します。CWモードでは、D603(1SS53)をスイッチングして39uHとTC601(60pFトリマ)によるVXO回路によって周波数を設定します。

これだけではLSBモードの周波数が上まで引っ張りきれず、さらにC612/613の帰還コンデンサも小さい値に変更してようやくOKとなりました。

なお、発振回路の出力側についているLPFは、10MHzで設計してありますが、もともと気休めのようなものですので、そのままにしています。


BFO回路の変更

FujiyamaのBFO回路(製作マニュアルより抜粋)

fujiyama_bfo.gif元の回路は、BFOの 周波数をUSBモード(キャリアポイントはサイドバンドの下側)に固定しています。水晶の銘板周波数よりも数kHz低い周波数に容易に調整できるよう、VXO回路としています。

Fujiyama40のBFO回路

fujiyama40_bfo.gif これに対して、Fujiyama40では、7MHzで使用するため、SSBについてはLSBモード(キャリアポイントはサイドバンドの上側)にしなくてはなりません。他方、CWの受信については帯域可変フィルタを利用するため、元回路と同様USBモードになります。このため、LSBモードとCWモードそれぞれでBFOのキャリアポイントの切り換え回路を追加しています。回路自体は改造後の送信のキャリア回路と同一になります。

それぞれの周波数は、フィルタの特性を実測した結果、LSBモードを4.9154MHz、CWモードを4.9130MHzとすべきことが判明しています。LSBモードでは水晶の銘板周波数よりも高くしなくてはならないので、インダクタンスを入れずに小容量のトリマコンデンサで周波数を設定します。CWモードでは、1SS53をスイッチングして39uHとTC501(60pFトリマ)によるVXO回路によって周波数を設定します。なお、1SS53は、スイッチングダイオードですが、スイッチングに必要な電流が通常のものよりもきわめて少ない特性を持っていますので、1S1588などで置き換える場合には、バイアス用の抵抗値を2.2k程度にする必要があります。

これだけではLSBモードの周波数が上まで引っ張りきれず、さらにC540/541の帰還コンデンサも小さい値に変更してようやくOKとなりました。

なお、発振回路の出力側についているLPFは、10MHzで設計してありますが、もともと気休めのようなものですので、そのままにしています。


受信IFアンプ出力同調回路の変更

元機の受信IFアンプに使われているIFTは、同調範囲9〜11.2735MHz、巻き数比9:1という仕様で作ってもらった特注品です。内蔵の同調容量は43pFとなっています。IFを4.9MHzに変更する場合、IFTとしてFCZ07S5を使いたくなるところですが、普通のFCZコイルでは、巻き数比が3:1と小さいため、MC1350Pのゲインをかなり殺してしまうことになります。よって、ここでは、元のIFTをそのまま使い、外部に同調容量を追加することにしました。

このIFTのコイルのインダクタンスは、中心周波数10.7MHz、同調容量43pFより計算して約5.15uH程度と推測されますので、4.91MHzでの同調容量を計算すると約204pFとなります。この値から内蔵の同調容量分43pFを差し引くと161pFですから、150pFを使うことにします。この値で、コアの調整によりうまく4.91MHzでピークを見つけることができました。


LPFの変更

fujiyama40_lpf.gif

7MHz以外のバンドの定数例

 

L401/402

C401/403/404/406

C402

C405

C407

3.5MHz

2.03uH (26t)

820pF

240pF

120pF

None

14MHz

0.51uH (13t)

220pF

62pF

27pF

None

21MHz

0.36uH (11t)

150pF

39pF

18pF

None

28MHz

0.24uH (9t)

120pF

33pF

12pF

None


残りの諸作業と調整

最後に、受信高周波増幅段や送信バンドパスフィルター、送信前置励振増幅段などの18MHz同調回路をすべて7MHz同調回路に交換します。7MHzの場合には、FCZ07S9と150pF、あるいはFCZ07S7と100pFが適しています。

アンテナ切替スイッチ回路の直列共振回路については、L501(4.7uH)を10uHに交換しましたが、トリマの調整だけでもなんとかカバーできるかもしれません。

調整で特に難しいところはそれほどありませんが、IF帯域可変フィルタとキャリア/BFO回りについては、使用する水晶によって特性が様々ですので、まず何らかの方法でフィルタの通過帯域特性を測定し、これに基づいてキャリアポイント等を決める必要があります。

調整完了後、簡単に受信感度や送信スプリアスを測定してみました。受信感度については、-10dBuV EMFがクリアに受信できますので、まずまずです。送信スプリアスについては、ワーストが第三高調波で-55dBc程度。それ以外はすべて-60dBc以下に抑圧されています。いずれも元機と同等の特性といえます。送信出力は電源電圧13.8V時に3.2W程度です。

では、GL!