アマチュア無線講座「QRPについて」終了

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JARL渡島桧山支部では、「アマチュア無線に関する講座」を11月19日、亀田公民館で開催しました。
開会の挨拶を行うJE8HLA伊藤支部長。
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今回のテーマは「QRPについて」でして、講師はJA8IRQ 福島さんです。


氏はJARL QRP CLUBの会長でありQRPの本の執筆もされており日本のQRPの第一人者でおられます。

クラブのリンクを貼っておきます。会報も公開されており見ごたえのある内容です。ご覧ください。

函館の全国大手の書店の科学・技術コーナーの責任者としてごご活躍されアマチュア無線の本も扱っておられます。
ホームQTHは札幌でして、仕事の関係で函館にいらっしゃっています。

また、キューバにも造詣が深く、アフター5には「函館ラテン化計画」の事務局、代表として「キューバの夜」などのイベントを手がけてらっしゃいまして、こちらの分野でも脚光を浴び新聞などで取り上げられています。

公私ともに新聞に掲載されご存じの方も多いと思います。
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アマチュア無線の最初の通信は、開局してミズホ通信のQRP無線機ピコ21を入手し、出力2Wで熊本県と交信でき感動し、それからQRPの魅力にとりつかれたそうです。

(写真は、ピコ21を手にして感慨深く説明するJA8IRQ 福島氏)

QRPの定義とは?

JARLではQRPは5W以下と定義されていて、ハイパワー局が出力を絞って5W以下ならそれもOKということです。
インターネット全盛の今、交信しようと思えばいつでもどこでも世界中と通信可能となった今、QRPは、ハンディを自分につけることで、より通信を難しくさせ、それを楽しむのが魅力だとおっしゃいます。

ひとつの面白いエピソードとしては、QRPの知り合いの方が言われていたのは、「出力を落とした時に、飛ぶ範囲が狭くなってきて、その分で世界が広がってきた。」という言葉を聞いてなるほどと思ったそうです。
QRPクラブの会員さんは1アマの方が多く、QROの設備を有している方もいますが、QRPは「高度な遊び」だとして楽しんでいるそうです。
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CQ出版社で発行している「QRP入門ハンドブック」は、JARL QRPクラブ著です。 

上記の書のリンクでは立ち読み、見本を見ることができます。

通信できないことを楽しむ?

アマチュア無線の意義を考えていて、

1・アマチュア無線は通信できことを楽しむ趣味である。
2・アマチュア無線に「意味」はない
3・アマチュア無線は「メタメッセージ」の遊びである

こういうことではないかと考えているそうです。

「遊ぶこと自体に意味があるのではなかろうと私は思っています。学校や企業で義務として学んでいる時ではなく、趣味の電子工作で遊んでいるときにいちばんよい学びができる、というパラドックスがそこにあるだろうと思います。」

と述べておられます。

詳しくは、氏の配布資料を文末に記していますのでご覧ください。

DXCC は、交信できないことを想定しておいて、それを楽しむ。
QRPもそういう世界で 自分で難しく設定して、チャレンジをして交信を楽しむのでして、通信できないことを面白く感じてやっているのではないか?と感じているそうです。

物事を深く追究する福島さんならでの捉え方に感心します。
氏ならではのアマチュア無線の哲学的な考察は見事でした。
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講演するJA8IRQ 福島氏。

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(右上は、JARL QRP CLUBの60年分の会報が収められているDVD ガリ刷りの時代からあり歴史ある団体です)


アワードの紹介
JARL QRPクラブで発行しているQRPアワードの紹介をされました。

  1. 1,000km/Total Power賞
  2. QRP 100局/W賞
  3. QRPアワード


質問
・ピコの入手方法は?
・スプリアス規制はどうなるのか?
・FCZコイルは

などが出され盛り上がり閉会となりました。 福島さん、そして参加されました各局さんおつかれさまでした。

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会場の亀田公民館

編集後記
てっきり技術系の話が中心かと思いましたが、「アマチュア無線とは、通信とは何か?」と掘り下げた内容もありまして講演として聴きごたえがありました。
さすが、職業訓練の講師をやられていた経歴です。


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配布された資料

【雑感】アマチュア無線は無用の用

JA8IRQ 福島 誠

私がアマチュア無線の免許を取った中学生のころは「ものごとの意味を過剰に考える」という悪癖があったので、「技術系に進むわけでもない自分がアマチュア無線をやる意味は何か」ということをずっと考えていました。今なら中二病と言われるところです。大人になってアマチュア無線を再開するときにその問いはいったん棚上げしましたが、まったく別なところから答えがみつかりました。それは「コミュニケーションの理論」を学んだことによるものでした。

•  1.アマチュア無線は通信できないことを楽しむ趣味である
•  2.アマチュア無線に『意味』はない
•  3.アマチュア無線は「メタメッセージ」の遊びである

実は、この3つは同じことを別な表現で言ったもので、アマチュア無線は交信の内容にはそれほど意味がなく、交信が成立するかどうかが最大の問題です。
これは鉄道の趣味の人が用事がなくても鉄道に乗ったり、郵便の趣味の人が用がなくても手紙をやりとりするのと同様の話です。当たり前の話ですが、ここにアマチュア無線という趣味の秘密があるようです。

1.アマチュア無線は通信できないことを楽しむ趣味である
アマチュア無線の目的のひとつは交信することですが、交信が成立すると話をすることはそれほどありません。実のところアマチュア無線の魅力のひとつは、簡単には交信できないということ自体にあるのだと思います。

アマチュア無線家たちは、なるべく「交信できないような状況」を作り出し、それをクリアすることに熱中します。DXCCや全市全郡、EME、UHFのダクト通信、短いアンテナによる長波通信。
そしてQRPもまた「交信できないような状況」のひとつといえます。
インターネットと携帯電話の普及で「世界中のどこの誰とでもリアルタイムに通信できる」という通信技術上の難問がクリアされつつありますが、通信できないことを楽しむ趣味はまだ健在です。

2.アマチュア無線に意味はない
なぜ、公共のものである電波を使った趣味が許可されているのか、というのはなかなか難しい問題です。それは短波を発見したのがアマチュアであったからという「既得権」が大きいと思いますが、アマチュアの中から技術の進歩に貢献した人が多かったこともあったのでしょう。

もちろん、戦争や災害など非常時の通信の担い手としても期待されていたでしょう。アマチュアのラジオ少年出身者が日本の電子工業の繁栄に貢献した話は『ラジオの歴史』(高橋雄造著・法政大学出版会)などに詳しく、またこの会の先輩たちをみていても納得できる話です。ただ、それは結果としての話であり、あくまで「アマチュア無線は無用の用」であって遊ぶこと自体に意味があるのだろうと私は思っています。学校や企業で義務として学んでいる時ではなく、趣味の電子工作で遊んでいるときにいちばん良い学びができる、というようなパラドックスがそこにあるのだろうと思います。

3.アマチュア無線は「メタメッセージ」の遊びである
私は一時期、職業訓練の講師として挨拶や会話、就職面接の受け方などコミュニケーションの技法を教えていました。その時に強調したキーワードとして「メタ・コミュニケーション」または「メタ・メッセージ」というのがあります。
「メタ」というのは「上位」のというような意味で、この場合は「コミュニケーションを成り立たせるための上位のコミュニケーション」「メッセージの意味付けの枠となる上位のメッセージ」というようなことになります。

たとえば、「4月1日の夜6時からホテルのレストランで食事をしよう」という意味のメッセージがあった場合に、それを直接会って話をするか、電話で話すか、メールで送るか、あるいはハガキか、白い紙に印刷して白い角封筒に入れて送るかで「メッセージの意味、受け取り方」が微妙に変わってきます。この、どういう方法で送るか、という部分が「メタメッセージ」のひとつの例です。

メタ・メッセージには誤解があってはならないものとされています。たとえば、教室で講義をしていて、その最中に「後ろの人、声が聞こえてますか?」と問いかけるのはメタ・メッセージです。その講義の内容自体(メッセージ)はクラスの半分の人にしか理解できなくても、「聞こえてますか?」という部分はクラスの全員が理解できなくてはなりません。
メタ・メッセージはいろいろなメッセージのやりとりの中で、「暗黙の了解事項」として使われています。いわゆる「空気の読めないヤツ」は、メタ・メッセージの解読が苦手な人のことだと言っていいでしょう。

その昔、冤罪の死刑囚の支援をやっていた人の話を聞いたことがあります。1980年以前の日本では死刑執行が公表されていませんでしたので、支援している囚人が生きているか、すでに処刑されてしまっているのか、ということがわかりませんでした。そこで支援グループはその死刑囚あてに毎日、簡単なあいさつを書いたハガキを出していました。生きていれば本人にわたりますし、そうでなければ「あて所に尋ねあたりません」の付箋がついて戻ってきます。これはメタ・メッセージ自体をつかったコミュニケーションです。私はQRPクラブのメーリングリストの管理人をやっており、会員がメールアドレスを変えるとエラーメールが届いてわかるようになっていますが、これもメタ・メッセージを使って会員の動静についての重要なメッセージを受信しているということになります。
もっと一般的には、紋切型の年賀状の交換に「本人の名前で来るのは生きている証拠」というような意義があります。

アマチュア無線はこのようなメタ・メッセージの部分だけで成り立っている趣味です。シグナル・リポートやQ符号といったものは電信電報の時代から引き継いできたメタ・メッセージにほかなりません。電子メールであればヘッダの部分に記入するべき部分です。もちろんアマチュア無線の場合、本来送るべき「電報の本文」を送受信することはめったにありません。メッセージの中身ではなく、どのようにメッセージが届いているかどうかだけを問題にするのがアマチュア無線のユニークな点です。

アマチュア無線は純粋な遊びであり経済合理性の原理の外にあります。だから買った方が安くても自作をするし、時代遅れの真空管を使ったリグで交信したりもします。アマチュア無線なら何でも許されます。いっけん意味がないことをや役に立たないことをあえてやってみることのメリットは計測不能です。QRPで遊ぶことの意味もそこにあるのだと思います。

レポート JA8IOT

本年もよろしくお願いいたします

  会員の皆さまには、常日頃、渡島檜山支部の運営に対しましてご支援・ご協力を賜り誠に有難うございます。

  平成28年6月開催のJARL定時社員総会終了時から2年間、継続して渡島檜山支部長の任に当たりますJE8HLA 伊藤秀夫です。これからも、参加しやすい行事を企画・推進してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

また、平成29年9月23日(土)、24日(日)には、JARL北海道地方本部では第5回北海道ハムフェアを開催します。支部会員の皆さまもぜひ会場に足をお運びいただいてハムフェアを盛り上げていただければと思います。新しい何かを、あるいは古くても自分に新しい何かを見つけられましたら幸いです 

 

箱館奉行所特別局運用

函館市が国の特別史跡・五稜郭公園内で進めてきた箱館奉行所庁舎の復元工事が完成し、2010年7月29日からオープンされています。

 
JARL渡島檜山支部では、この奉行所オープンを広く国内外にPRするとともに、支部活性化を目指すために特別局を開設し、2010年7月17日(土)~8月1日(日)、8J8BUのコールサインで運用し、延べ3,981局と交信ができました。交信頂きました各局、有難うございました。