MC3362を使った10MHz受信機のバラック・テスト成功
(一部追記・訂正あり)

1998年6月28日

 狭帯域FMダブルスーパー受信回路用ICであるMC3362を使った10MHzトランシーバの受信部のバラック・テスト風景です。
 この回路のオリジナルは、91年頃のQSTで紹介されたもので、日本の雑誌でも抄訳が掲載されました。ほとんど同一の回路によるキットも出ているようです。

回路の概要

 左側で寝ているのが入力同調回路で、ここからIC内の1stMIX(DBM)に入ります。トロイダルコアとその隣のトリマはIC内の1stLOにつながっています。実際の同調操作は、その左にある半固定抵抗でIC内のバリキャップを制御します。半固定抵抗の操作で6.100〜6.150MHzの範囲を可変できます。1stMIXの出力は、今度は4.000MHzの4エレ水晶フィルタ(-3dB帯域1.0kHz)を経由してIC内の2ndMIX(DBM)に入ります。BFOは、「C」と書かれた4.000MHzの水晶をIC内部の2ndLO回路で発信させています。

外部能動素子の付加なしで-10dBuVの信号を受信可能

 MC3362は2つの内部MIX回路だけで40dBの利得を稼いでいますが、AFアンプをつながず、2ndMIXの出力に直接クリスタルイヤホンをつないだ状態でSSGの信号を入れると、一応-10dBuVまでなんとか受信可能でした。電源は、3端子レギュレータで5Vを与えており、回路電流は5mA。かなり省エネ型です。
 次に、AGCをかける目的でIFの水晶フィルタの後に2SK241Yの非同調アンプを2段入れ、さらにLM386のAFアンプを接続してみたところ、SSGの-20dBuVの信号がスピーカからうるさいほどの音量で復調できました。
 アンテナをつなぐと、30mバンド内のFAXだかRTTYだかの信号とCWの交信が聞こえました。

内部VFO回路の周波数安定度はきわめて良好

 今回の実験で一番びっくりしたのは、IC内蔵のVFOの周波数安定度がきわめて良好なことです。トロイダルコアT-50-6の25t巻きと100pFのシルバードマイカ、100p(?)フィリップストリマと内蔵のバリキャップの組み合わせでは、電源投入から30分後以降の周波数漂動は100Hz以内に収まっており、十分実用になると判断できます。試しに一晩中電源を入れっぱなしにして翌朝見たところ、約1kHz動いていました。これは、室温の変化等もあるのだろうと思います。なお、コイルをFCZコイルに変更すると、いったいいつになったら平衡状態になるのかと思うほど、どんどん動いていってしまいました。

課題

 さて、課題ですが、水晶フィルタの後に入れた2段の2SK241Yの非同調アンプのゲートを使ってAGCをかけてやりたいと思います。その次は送信部の実験にとりかかります。VFOとBFOのそれぞれのバッファアンプ付の出力をNE612で混合して2SK241による励振増幅段、2SC1815の出力増幅段をつけてやれば、100mW程度の送信部ができるのではないかと期待しています。

MC3362の2ピンはどうやって使うのか?

 ところで、MC3362のデータシートには、IC内蔵のふたつの局発回路は、いずれもバッファード出力端子が設けられていると書かれていて、第2局発については2ピンがこれにあたることになっているのですが、回路例にはこのピンだけ使い方が何も示されていません。エミッタに定電流回路が入っているので、コンデンサ結合だけで取り出せるものと思って周波数カウンタをつないでみましたが、まったく周波数を計測できません。どなたかくわしい情報をお持ちでしたら、教えてください。−−と書いたところ、JA9TTT/1加藤さんから、「内部は等価回路通りだと思いますが、回路電流をかなりけちっているので、エミッタフォロワと言っても出力インピーダンスがかなり高いようです。もし、このピンを何かへの応用をお考えならFETのバッファアンプを付加されると良いかも。 あるいは、内部の定電流源を無視して、外付けで数kΩの抵抗を対アース間にいれて電流を増やすと良さそうです」等々のアドバイスが。あらためてオシロをつないで観察してみたら、2ピンにはちゃんと150mVp-pの出力が出ていました。失礼いたしました。なお、第1局発のバッファの方は、750mVp-pと強力です。